更新日:2018.07.18
この度、本学の大学院情報工学研究院 生命情報工学研究系 末田 慎二教授が、細胞の核膜を蛍光色素で染色する技術の開発に成功しました。
生命の設計図であるDNAは、核膜によって隔てられた核内に存在しています。核膜は非常に複雑な構造体ですが、細胞分裂の度に崩壊と再形成を繰り返しています。このような核膜の動きを追跡するためには、生きた細胞の中で核膜を染色する必要があり、これまでは核膜に存在するタンパク質に蛍光色素を連結したものが使用されてきました。しかし、核膜に存在するタンパク質は、染色体などの核内成分と相互作用するため、核膜の動きを正確に追跡することができませんでした。
本研究では、火山や温泉などに生息する「古細菌」という生物から見つけた、特殊の酵素反応を利用して、核膜だけに蛍光色素(蛍光タンパク質)を連結する技術を開発しました。この技術では核膜に元々存在するタンパク質を利用しないため、核膜の動きを正確に追跡することができます。実際に、この技術を利用して細胞分裂中の核膜の様子を詳細に観察することに成功しました。
この技術は、細胞分裂の仕組みを調べる基礎研究だけでなく、ガン細胞の識別などの医療分野への応用も期待されます。
本研究の成果は、2018年6月15日(電子版5月21日)付「ACS Chemical Biology」で公開されました。
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