更新日:2023.08.01
2023年7月27日、美藤正樹教授(大学院工学研究院基礎科学研究系)をはじめとするスペインとフランスの研究機関を巻き込んだ国際共著論文が、長年の謎であった「ホルミウムの高圧力下の強磁性磁気秩序の有無」の真偽を明らかにし、英国の科学オープンアクセス誌「Scientific Reports(Springer Nature社)」に掲載されました。
概要:周期律表にある118の元素の内、9つの元素で低温において強磁性磁気秩序が安定化します。その内の6つがランタノイド系の金属元素ですが、低温でその強磁性磁気秩序が消失するのかについて、半世紀以上前から磁気測定?電気抵抗測定?中性子回折実験によって調べられてきました。このテーマについて、2019年度から科研費国際共同研究強化(B)「高圧力下におけるランタノイド系希土類金属強磁性元素の磁気構造の究明」の助成を受け、スペイン?ザラゴザ大学とフランス?ラウエランジェバン研究所と共同で、高圧力中性子回折実験を進めてきました。
今回、ランタノイド金属元素の内のホルミウムで、8GPaでは強磁性磁気秩序が消失していることを世界で初めて実験的に証明することができました。この結果は、先行する米国の研究グループの高圧中性子回折実験とは異なり、九工大の美藤の研究グループが報告してきた磁気測定の結果を支持することになっており、未確定の問題を解決したことになります。現在、本実験はラウエランジェバン研究所でなければできない実験です。既に他の元素についても実験が進んでおり、今後の展開に期待が持てます。
著者 | M. Pardo-Sainz, F. Cova, J. A. Rodríguez-Velamazán, I. Puente-Orench, Y. Kousaka, M. Mito & J. Campo |
発表題目 | ”Revisiting the magnetic structure of Holmium at high pressure: a neutron diffraction study” |
掲載誌 | Scientific Reports, Vol.13, 12168 (2023). |