病気の類似性から創薬標的や治療薬を探索する機械学習手法を開発
-分子ネットワークを有効活用した医薬品開発へ-
九州工業大学 情報工学研究院の山西芳裕教授が研究代表者を務める研究グループは、ヒト生体内分子間相互作用ネットワークにおいて病気の類似性を評価し、創薬標的分子や治療薬を探索する情報技術を開発しました。
ポイント
- 従来の創薬標的分子の探索方法では、候補となる生体分子は非常に多く、探索空間が広いため大きな課題であった
- 分子間相互作用ネットワークに基づく病気の類似性を評価し、様々な病気に対して創薬標的分子や治療薬候補を探索する機械学習手法を開発
- この研究成果により、病気のメカニズムの解明や薬効の予測など、医薬品開発の促進が期待される
医薬品開発において、創薬標的分子やその制御化合物を見つけることは重要課題です。これまで、注目する病気のデータを精査し、創薬標的分子や治療薬の探索がされてきましたが、創薬標的の候補となる生体分子は非常に多く、探索空間が広いため、有効な創薬標的分子や治療薬を選ぶのが困難という問題がありました。
本研究グループは、病気を特徴付ける様々な分子間相互作用ネットワークを比較することにより、分子間の機能的な連動性を考慮し、病気間の共通性や特異性を明らかにする方法を提案しました。さらに、似ている病気の創薬標的分子や治療薬の事前知識を取り入れ、候補を絞り込むことにより創薬標的分子や治療薬を効率よく探索する機械学習アルゴリズム(AI基盤技術)を開発しました。これにより、従来法と比較して、創薬標的分子や治療薬を高い精度で探索することが可能となりました。
開発手法は、創薬標的分子や治療薬の探索だけでなく、病気の分子メカニズムの解明、薬効予測などに活用できるため、医薬品開発に大きく貢献することが期待されます。
なお、この研究成果は、2020年7月13日(英国夏時間)に国際科学雑誌「Bioinformatics」に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業AIP加速研究(AIP加速PRISM研究*)における研究課題「創薬標的分子の確からしさを検証するツール物質の探索」(研究代表者:山西 芳裕)の研究の一環で行われました。
*本事業は、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の一環で行うものです。
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