世界で初めて、新しい熱輸送現象を測定することに成功
-表面フォノンポラリトンによる熱輸送-
九州工業大学 工学研究院 機械知能工学研究系の宮﨑康次 教授の研究グループにおいて、新しい熱輸送現象を測定することに世界で初めて成功しました。フランスUniversité Paris-Saclay, Université de Poitiersの共同研究者が表面フォノンポラリトンによって薄膜における熱輸送が促進されることを提唱してきましたが、対象となる超薄膜の作製が極めて難しく実験で示されることがなかった現象です。
ポイント
- 表面フォノンポラリトンによる熱輸送(面方向)を世界で初めて測定
- 北九州学術研究都市の施設利用で作製が難しい実験系(膜厚20nmの自立膜)の作製に成功
- フランス、メキシコの研究機関との共同研究成果
今回の発見は、文部科学省ナノテクプラットフォームの枠組みで北九州学術研究都市の共同研究開発センターのスタッフとともにクリーンルームでの微細加工技術で長年培ってきた技術を駆使して達成された成果です。測定ではメキシコのCinvestav Unidad Méridaのグループにも試料提供して研究を確実なものとしました。従来、薄膜の厚みが100nm以下になると熱を輸送する格子振動(フォノン)が伝わりにくくなり、熱輸送が低下することが知られてきました。しかし、さらに膜を薄くしていくと体積に対する表面の割合が大きくなるため、表面にのみ存在する電磁波(表面フォノンポラリトン)の輸送する熱エネルギー量が相対的に増え、結果として断面積あたりで評価する熱伝導率が増加します。
今後は、この発見によりフォノンだけでなく表面フォノンポラリトンによっても熱が輸送されることが示されたため、例えば、深刻な発熱問題を抱えている電子機器の冷却技術に新たな選択肢を提供することになります。電子機器冷却は、携帯電話の高性能化や電気自動車の高出力化などと直結することから、日常生活をより便利にする大切な技術の一つです。
なお、この研究成果は、2019年9月16日(電子版)付「Nano Letters」で公開されました1。
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