粘菌細胞どうしの会話が変化する
-細胞間情報伝達の様式が発生段階によって切り替わることを世界で初めて発見-
九州工業大学大学院情報工学研究院の森本雄祐 助教と大阪大学大学院生命機能研究科の上田昌宏 教授らの共同研究グループは、細胞の集団運動を制御する細胞間情報伝達の動態が、発生の進行に伴って大きく切り替わる現象を世界で初めて発見しました。
ポイント
- 背景:これまで細胞性粘菌の発生を通じた細胞間情報伝達シグナルの実体は計測されていなかった。
- 成果:細胞性粘菌の発生段階を通じて細胞集団運動を制御すると考えられていた周期的な細胞間シグナル伝達(cAMP伝搬波)が、実は発生後期になると消失することを発見。
- 今後の展望:細胞の集団運動は、様々な生物の発生や傷ついた組織の治癒、がんの浸潤などで見られる重要な生命現象である。今回の成果はそれらの仕組みを理解するための新たな視点をもたらす。
細胞の集団運動は胚発生における器官の形成や傷ついた上皮の治癒など様々な場面で重要な役割を担う現象として知られています。集団運動研究のモデル生物である細胞性粘菌では、発生段階を通じて周期的な細胞間シグナル伝達が集団運動を制御すると考えられていますが、その詳しい実態はよくわかっていませんでした。
今回、研究グループは、蛍光顕微鏡イメージング技術を用いることで細胞間情報伝達の高感度な可視化に成功し、発生初期に周期的に行われる細胞間情報伝達が発生後期になると消失することを発見しました。今回の発見は、細胞の集団運動の仕組みに関する普遍モデルに新たな視点を与えると共に、がんの浸潤や創傷治癒の仕組みの理解といった医科学分野への貢献も期待されます。
◇本研究成果は、英国科学誌「Communications Biology」に、1月24日(木)19時(日本時間)に公開されました。掲載はこちら。(外部リンク)
Collective cell migration of Dictyostelium without cAMP oscillations at multicellular stages
Hidenori Hashimura, Yusuke V. Morimoto, Masato Yasui & Masahiro Ueda
Communications Biologyvolume 2, Article number: 34 (2019)
◇詳細はこちら。(プレスリリース本文)
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