九州工業大学大学院生命体工学研究科の平田 研二(ひらた けんじ)大学院生(現:産業技術総合研究所)、飯久保 智(いいくぼ さとし)准教授および、九州大学大学院工学研究院の小山 元道(こやま もとみち)助教、津﨑 兼彰(つざき かねあき)教授、安部 祐司(あべ ゆうじ)大学院生は、九州大学大学院理学研究院の光田 暁弘(みつだ あきひろ)准教授らと共同で、立方晶fcc構造を有する鉄鋼において、水素含有量が増加するほど六方晶hcp相の生成が抑制されることを世界で初めて発見しました。
鉄鋼の強さと機能性は、結晶構造の制御によって最適化されています。結晶構造は、鉄に添加する元素の種類や量によって変わります。例えば、fccやhcpなどの結晶構造の安定性を制御するために、従来は添加元素として炭素や窒素などが利用されています。水素も多量に存在する元素ですので、これまでにfccに対するhcpの相安定性が半世紀にわたり調査されてきました。従来研究によると、水素はfcc→hcp結晶構造変化を「促進」することが定説とされます。
しかし、本研究で水素を含ませた鋼材を作製し、fcc-hcp変態(用語1)の挙動を調査したところ、水素がfcc→hcp結晶構造変化を「顕著に抑制」することが見出されました。これは世界で初めて観測された現象であり、fcc鋼で水素がfcc-hcp構造変化に与える影響の常識を打ち破るものです。水素はクリーンな資源として注目が集まっており、水素による鉄鋼の結晶構造制御は、今後、新たな鉄鋼材料創製につながると期待されます。
この研究成果はネイチャー?パブリッシング?グループの学術誌「Scientific Reports」のオンライン版で10月31日(日本時間18時)に掲載されました。
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