国立大学法人九州工業大学 大学院情報工学研究院の山西芳裕教授らの研究グループは、国立大学法人富山大学 和漢医薬学総合研究所の門脇真教授らの研究グループとの共同研究により、漢方薬の新しいアルゴリズム/データベース「KampoDB」を開発しました。この開発により、漢方薬、その構成生薬及び成分化合物と標的タンパク質の階層的関係から、漢方薬が生体に薬理学的効果を及ぼす仕組み?メカニズム(作用機序)の考察を可能にするだけでなく、in silico結合シミュレーションや機械学習の手法を用いて、漢方関連ビッグデータを解析することにより、漢方薬の新しい効能の予測(漢方薬リポジショニング)も可能にしました。
この研究グループは「KampoDB」を用いて、42種類の漢方薬と54種類の生薬を解析し、それらの成分化合物の標的タンパク質や標的パスウェイの探索によって、漢方薬の未知の作用機序や適応可能疾患を予測および同定することで、複雑系薬剤である漢方薬の解析手法としての有効性を示しました。
本研究により、経験知に基づく従来の漢方薬治療に、科学知に基づく新しい治療コンセプトを提示することが可能となり、医療現場での漢方薬の利活用が促進されることが期待されます。
この研究成果は、2018年7月25日に英国科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。
【論文タイトル】
KampoDB, database of predicted targets and functional annotations of natural medicines
【研究成果のポイント】
◆漢方薬、その構成生薬及び成分化合物と標的タンパク質の階層的関係から、漢方薬の作用機序を考察できるアルゴリズム/データベースKampoDBを開発。
◆シミュレーションや機械学習を用いた漢方ビッグデータの解析により、漢方薬の新しい効能を予測する「漢方薬リポジショニング」を可能にした。
◆従来の経験知に加えて、科学知に基づく新しい治療コンセプトの提示により、医療現場での漢方薬の有効利用が期待できる。
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