九州工業大学のダイバーシティ&インクルージョン
男女共同参画推進室について
平成29年度文部科学省科学技術人材育成費補助事業に採択されました
九州工業大学は、平成29年度の文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」に採択されました。本補助事業での取組を通して、女性研究者の働きやすい環境整備と研究力の 向上、女性研究者比率の向上と上位職への登用、次世代育成について、今後もなお一層、熱意を持って、進めてまいります。
【事業期間】
平成29年度~令和4年度
(補助金交付期間 平成29年度~令和元年度)
本学は、文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」(平成29年度に選定)における中間評価において、最高評価である「S評価」を獲得しました。
これは、2つの「九工大方式」として展開してきた、「男女共同参画推進会議」と「複合支援」(「在宅勤務」×「支援研究員配置支援事業」)の取組による成果が高く評価された結果です。学長のリーダーシップのもと4件の女性限定公募(工学系)等を行うことで女性教員数について所期の目標を超える数値を達成した点、また「複合支援」によってライフイベント中の女性教員を支援することで研究力が効果的に向上した点などが、本学の取組成果として高く評価されました。
本学は、今後もこの取組を継続し、「Kyutech Project」を鋭意推進してまいります。皆様のご支援?ご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。
男女共同参画推進室のシンボルマーク
学術の分野における活躍をイメージして「本」を土台とし、個性の異なる様々なメンバーが共存する様子に加えて、「Gender Equality」の文字を屋根に見立てて、大学の校舎を表現しています。色は大正13年より使用されている本学の校章に合わせることで、これまでの伝統を重んじつつも、新たな改革を進めていくことを表しています。
【Kyutech Project】の展開
九州工業大学は、平成 29 年度の文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」への採択に伴い、学長直下に「男女共同参画推進会議」を設置するなど、実施組織の再編と実施体制の基盤強化を図りました。
女性教員の数値目標に関する管理?施策展開は「男女共同参画推進会議」のもとで、また、その他の両立支援、研究環境整備、研究力強化、意識啓発、次世代育成、Networking に関する諸取組は「男女共同参画推進室」にて諸施策を実施?展開し、両者の有機的な連関のもとで、「Kyutech Project」として目標達成を目指しています。
1 本学独自の「九工大方式」の展開
「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」補助事業の遂行においては、「特色型」として、単一機関内における「ライフイベントとの両立支援(研究中断復帰支援を含む)」「研究環境整備」「研究力向上」「女性教員※の増加と上位職への登用」等の取組が求められています。
ただ、上記の取組のうち最重要課題である「女性教員の増加と上位職への登用」、すなわち「女性教員の採用?昇任の増加」という課題は、人事関連の内容であり男女共同参画推進室による対応は難しいと判断されたため、本学では、この課題に対応するための会議体(=「男女共同参画推進会議」)を創設してプロジェクトを推進することとしました。
このように、本学では、事業の中での取組内容の機能に応じて担当を明確に分離し事業を推進していくという推進体制を構築しています。このような機能分化させた体制の構築が、本学の大きな特長です。
そして、このような体制の構築のために、組織体制と支援体制の両方において独自の方策を採用しています。これが2つの「九工大方式」です。
※本学では、「女性研究者」全般ではなく、対象を「女性教員(任期なし?テニュアトラック教員)」に限定しています。
2 「組織における九工大方式」:学長のリーダーシップと「男女共同参画推進会議」
「九工大方式」の1番目は、「組織における九工大方式」です。これは学長をトップとする「男女共同参画推進会議」を創設したことです。これにより、取組の内容に応じて、担当組織を明確に分化させた推進体制を構築させることができました。
女性教員の採用等、人事面の取組である「女性教員の増加と上位職への登用」については、学長のリーダーシップのもと、新設の「男女共同参画推進会議」が担当することとし、この推進会議が女性教員数?比率に関する数値管理を行います。他方、女性教員への支援に関連する取組、すなわち両立支援、研究環境整備、研究力向上に関する取組については、従来の「男女共同参画推進室」が担当するという二分体制を構築しました。
このように、両者の役割?機能を明確に切り分け、しかもその2つの組織が、それぞれの役割を果たしつつ車の両輪のように歩調を合わせながらプロジェクトを進める体制を構築したのです。
図1にあるように、男女共同参画推進会議は、学長をリーダーとする組織であり、事業採択後、大学の構成員の多様化、ダイバーシティが肝要とする学長のリーダーシップのもと、積極的にポジティブアクション(女性限定公募)を展開しました。平成29年11月から令和元年5月までの間に、工学系の女性限定公募を、連続して4件実施しています。
3 支援における九工大方式:「複合支援」
次に、「九工大方式」の2番目、「支援における九工大方式」についてです。
男女共同参画推進室においては、採択後より、研究環境整備として「女性研究者支援事業」を開始しました。特に、「女性研究者支援事業」のうちの「支援研究員配置支援事業」が、ライフイベント中の女性教員の研究力向上にとって重要であることは周知の事実です。また、本学では、推進室の設立当初より、ライフイベント中の教員に対して「在宅勤務」を積極的に推進してきました。そこで、本学独自の支援方策として、この2つの支援を組み合わせることで、「在宅勤務」×「支援研究員配置支援事業」という、2つの支援の「複合支援」方策を展開することとしました。これが、2つ目の「九工大方式」=「支援における九工大方式」=「複合支援」です。
ライフイベント中の教員にとって最大の悩みは、「研究時間の不足」です。ライフイベントに時間が割かれる時期に、在宅勤務制度は、特に自宅が遠い教員にとっては、通勤時間を研究時間にあてることができ、「研究時間の確保」に有効に機能します。これに対し、大学における研究時間を効率よく使い、スピード感をもって研究を進めるためには「支援研究員配置支援事業」が有効で、この支援は「研究の質」を向上させます。図2にある通り、この両者による「複合支援」により、研究時間をできるだけ確保しつつ、短い研究時間であっても研究の質を高められるという、量と質の観点から研究力向上を図ることができるような体制づくりを目指しました。
4 女性教員数?比率の上昇
こうした独自方式=2つの「九工大方式」を展開することにより、「女性教員の採用?昇任の増加」「研究力向上」について、明確な成果が現れました。
まず、女性教員在職者数?比率についてですが、図3にあるように、平成29年5月1日では26人、7.5%だった女性教員数?比率は、その後の取り組みの効果により順調に増加?上昇し、令和元年9月1日には31人、8?8%へと増加しました。これは、年度計画を大きく超えた達成状況です。女性限定公募4件実施の効果によるものと考えています。
また昇任についても、この間、教授昇任3人、准教授昇任1人の4人が昇任しています。教授昇任3人のうち2人は、工学系教授です。女性の工学系教授は全国的にまだまだ少ない中、この期間に2人の工学系教授の誕生となりました。
これらは、いずれも、学長のリーダーシップのもとでの、「男女共同参画推進会議」における取組の成果です。
他方、研究力向上については、男女共同参画推進室が担当している「複合支援」により、「両立支援」「研究環境整備」の取組を行い、その効果として、女性教員の科研費の採択率(継続含む)が大幅に上昇しました。令和元年5月採択分を平成29年5月分と比較すると、工学系女性教員においては採択率が1.53倍上昇しました。全女性教員では1.27倍の上昇です。本学にはライフイベント中の女性教員が多いのですが、そのうちの約9割が、「複合支援」あるいは「在宅勤務」「支援研究員配置支援制度」のいずれかを利用しています。このように、「複合支援」の取組により、「研究力向上」の成果が現れています。
以上の通り、2つの九工大方式の展開が、「女性教員の採用?昇任の増加」「研究力向上」につながり(図3、4)、3年度目の中間評価におけるS評価の獲得につながりました。4年度目以降も、この「九工大方式」を展開することで、積極的にプロジェクトを推進し、着実に成果につなげていきたいと考えています。