更新日:2017.03.22
本学 生命体工学研究科の尾込裕平助教、早瀬修二教授の研究グループは、国立大学法人筑波大学 数理物質系 丸本一弘准教授らの研究グループと共同で、ペロブスカイト太陽電池中の正孔輸送材料のドーピング(添加)による効率向上の微視的機構を解明することに成功しました。
有機無機混成材料であるペロブスカイトは太陽電池の最も有望な新しい材料の1つとして注目されています。ペロブスカイトは比較的安く作製でき、軽量かつフレキシブルな特長を持ち、この数年間で著しいエネルギー変換効率の向上が達成され、従来の最も優れた光電池材料と匹敵する特性が得られています。従来の研究では、主にペロブスカイト太陽電池の効率の向上に焦点が置かれてきました。しかし、効率に寄与する具体的な微視的機構については、十分に解明されていませんでした。
本研究では、ペロブスカイト太陽電池に使用される典型的な材料であるspiro-OMeTADと、伝導性を向上させるために添加されるリチウム塩(Li-TFSI)に着目し、電子スピン共鳴(ESR)分光を用いて、材料内の正孔(正電荷)の形成と移動の状態を検出しました。その結果、リチウム塩によりspiro-OMeTAD内に正孔がドーピングされ、それにより他の正孔が自由に移動できるようになることで、電流を運ぶ能力が向上するメカニズムを明らかにしました。
今回の研究結果は、ペロブスカイト太陽電池の更なる効率向上や新しいより良い材料の開発指針を与えるものとして期待されます。
本研究の成果は、2017年3月21日付「Applied Physics Letters」で公開されました。
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